メディカル情報

イヤーケア

耳の機能

耳には、外耳、中耳、内耳という3つの部分があります。

外耳は、耳の外から見える部分および鼓膜までの外耳道から成ります。外耳道は外の耳穴から鼓膜まで少ず つ細くなっており、キャッチした音波を圧縮して、音波のエネルギーを強くします。

中耳は鼓膜の奥にある空洞です。ここには、槌(つい)骨、砧(きぬた)骨、鐙(あぶみ)骨という3つの 小さい骨(耳小骨)があり、鼓膜と内耳をつないでいます。耳小骨は音を内耳に伝えるとともに、音の信号 を増幅する働きもあります。また、中耳はのどと、耳管という細い管でつながっており、この耳管を通して 空気が中耳に入ることにより、中耳が乾いた状態となり、気圧の調節もできるようになっています。

内耳は、中耳の奥の骨に包まれた中にあり、中耳からの音の振動を、電気的な信号に変換する働きをしてい ます。内耳で変換された電気信号は、聴覚の神経を経由して脳に達し、脳が電気信号を解釈することで、我々 は音を聴くことができます。中耳の振動を電気信号に変換するのは、内耳にあるコルチ器です。非常に大き な音は、コルチ器の有毛細胞を傷めます。有毛細胞が傷むと、電気信号への変換ができなくなり、脳は音の 情報を受け取れなくなってしまうのです。

外耳・中耳・内耳のどれかに問題があれば、聴覚に影響が出ます。たとえば、耳垢が耳道に詰まると、音波 が中耳に届く前にブロックされる可能性があります。炎症によって中耳に液体が溜まれば、耳小骨が動かな くなるので、外耳からの音が充分に伝わらなくなります。
また、上記のように、大きい音によって内耳が傷むと、脳に音の信号が伝わらなくなります。


文献
Australian Hearing, NFR2142.
Practical Otology, Daniel J. Pender, J. B. Lippincott Company, 1992.

▪定義
中耳炎は鼓膜の奥にある空洞(中耳)に炎症を起こす病気です。急性中耳炎は、風邪やのどの炎症が、耳管 という管を通って中耳へ移り発症する病気です。子供の約75%が3歳までに中耳炎にかかり、その子供の半 分は、4 歳までに3 回も中耳炎にかかります。

滲出性中耳炎は、中耳に滲出液がたまる病気で子供とお年寄りが多くかかります。滲出液が溜まるため聞こ えが悪くなりますが、子供の場合は、聞こえなくなっていても、自分で耳が聞こえないとは言わないことが ほとんどで、ただ不機嫌なだけに見えたり、言葉の発達の遅れなどが唯一の症状のこともあります。
慢性中耳炎は、これらの中耳炎が十分に治りきらずに、鼓膜に穴が開いた状態になった病気で、鼓膜の穴か ら断続的に耳漏が見られ、聞こえも悪くなります。この中には、進行性に悪くなり、脳に炎症を起こしたり、 顔面神経麻痺(片方の顔が動かなくなる)を起こすことさえもあります。

急性中耳炎・慢性中耳炎の治療は2つのステップに分けられます。
1.感染菌を退治する。
2.耳の中を湿らせないように気を付ける。

抗生物質などで感染菌を抑えるのに加え、入浴時の水や汗などと一緒に再び細菌が耳に入らないよう、充分 に注意する必要があります。そのためには耳栓をすることが最も確実です。滲出性中耳炎の場合には、抗炎 症剤や点鼻薬を使って炎症で狭くなった耳管を広げ、中耳にたまった滲出液が外へ流れ出るようにします。
しかし、薬によって中耳にたまった滲出液が外に流れ出ないことも多いため、ほとんどの場合、病院では、 滲出液を出すために鼓膜を切開したり、鼓膜に小さいチューブを挿入したりします。その際に必ず病院でも“耳 に水が入らないよう、注意すること“と言われるはずです。細菌をたくさん含んだお風呂の水や汗が耳に入る と、病気はさらに悪化します。必ず耳栓をさせる必要があります。
たとえ中耳炎にかかっていても、しっかりした耳栓で防護すれば、耳の中に水が入ることはないため水泳を しても大丈夫です。

文献
総合荻窪病院耳鼻咽喉科 菅家 元「小児科診療・1998 年8 号 夏と小児疾患」
*Gates GA, Cost-effectiveness Considerations in Otitis Media Tre atment, Otolaryngol Head Neck Surg, 114 (4), April 1996,
525-530.
https://my.webmd.com/content/article/1680.51736
McKinley Health Center, www.mckinley.uiuc.edu/info/dis-cond/mis c/otitisme.html
Miller-Keane Medical Dictionary, 2000.
Practical Otology, Daniel J. Pender, J. B. Lippincott Company, 1992. 6. Audiology and Auditory Dysfunction, George T.
Mencher, Sanford E. Gerber, Andrew McCombe, Allyn & Bacon, 1997 .

▪定義
外耳炎の多くは水泳や入浴などで入った水が外耳道に残り、その中に含まれるバクテリアやカビ(真菌)が 増殖することにより起こるため、スイマーズ・イヤーと呼ばれています。また、耳掻きや耳掃除によって外 耳道に傷がついたり、プールの塩素による炎症が原因になることもあります。

▪治療
一般的には耳穴から抗生物質の点耳をしたり、抗真菌剤を耳の中へ塗ることにより治療されます。炎症を悪 化させないためには、耳を濡らさないことが大切です。
そのためには水泳・入浴・シャンプーの際にはシリコーン製の耳栓を用いることが奨められています。

文献
総合荻窪病院耳鼻咽喉科 菅家 元「小児科診療・1998 年8 号 夏と小児疾患」
Recenti Prog Med 2002 Feb;93(2):104-7.
Br J Gen Pract. 2001 Nov;51(472):930.
www.adam.com Updated by: Camille Kotton, M.D., Infectious Disea ses Division, Massachusetts General Hospital and Brigham
and Women's Hospital, Boston, MA. Review provided by VeriMed He althcare Network.
www.mckinley.uiuc.edu
サーファーズ・イヤー

▪定義
サーファーズ・イヤー(外耳道外骨腫)は、鼓膜の周りに、真珠のような小さくて硬い腫瘍ができる病気です。
この病気は、サーファーや水泳選手がよくかかり、冷たい水が耳の中に入るためと考えられています。
この腫瘍が大きくなると、外耳道をブロックし、骨腫と鼓膜の間に耳垢が詰まり、難聴を起こします。

▪治療 腫瘍が成長して大きくなると、不快感や痛みを起こしたり、難聴になったりして、手術が必要になります。
冷水が耳に入ると腫瘍が成長するので、防水用シリコーン製の耳栓を利用することで、冷たい水をブロック するのが一般的な予防対策です。

文献
総合荻窪病院耳鼻咽喉科 菅家 元「小児科診療・1998 年8 号 夏と小児疾患」
Practical Otology, Daniel J. Pender, J. B. Lippincott Company, copyright
1992Copyright 2000
www.adam.com Updated by: Ashutosh Kacker, M.D., Department of O tolaryngology, Columbia-Presbyterian
騒音性難聴

▪定義
騒音性難聴は、突然の強大音や長時間続く騒音で内耳が障害される病状です。
耳には、外耳、中耳、内耳という3つの部分があります【耳の機能を見て下さい】。

外耳は、キャッチした音波のエネルギーを拡大します。
中耳は音を内耳に伝えるとともに、音の信号を増幅する働きもあります。
内耳は中耳から伝わった音の振動を電気的な信号に変換し、その電気信号を聴覚の神経で脳に到達させます。
大きな音は、内耳が音の振動を電気的な信号に変換する機能を害します。花火のように瞬間的な大きい音は もちろん、長時間続く工場の騒音なども内耳を傷めます。

12.5% の子どもは騒音難聴があると思われています。
米国政府医療機関の研究者アマンダ・ニスカーによると、4時間バイクに乗ること、2時間ヘッドホンで大 きい音を聴くこと、7分ロックコンサートを聴くことによって、耳を傷めます。
12.5% の子どもは騒音難聴があると思われています。 (Better Homes and Gardens, November 2001.)

▪治療 残念ながら、よい治療方法はありません。
内耳が騒音で傷んだら、回復は困難でしょう。年齢に関わらず、真剣に難聴を予防する必要があります。
非常にうるさい場所にいる時は、必ず耳栓か耳おおいを付けてください。耳栓がフィットしているかどうかで、 遮音効果がずいぶん変わりますので、しっかりとフィットする耳栓を使ってください。

文献
Australian Hearing Services, Hear & Now, Issue 2, February 1998 .
Australian Hearing, Frequency and Intensity of Familiar Sounds, NF, 1982.
National Institute on Deafness and Other Communication Disorder s (NIDCD).
National Institute for Occupational Safety and Health (NIOSH) W ise Ears Campaign.

▪定義
不眠症にはさまざまなパターンがあります。
眠りにつけないこと、長く眠れないこと、不適当な時に眠ってしまうこと、また、睡眠時間が長過ぎることや、 異常な睡眠も含まれることがあります。
騒音が30 デシベルを超えると、睡眠に影響が現われはじめます。30デシベルというのは、運転中のエアコ ンと同じくらいの音量と考えればいいでしょう。騒音が大きくなればなるほど、あるいは騒音の頻度が多く なればなるほど、睡眠への悪影響は増大します。

お年寄り、病人、交替勤務の人などは、騒音で睡眠不調になりやすいといえます。
睡眠不足が健康を損ない、仕事や勉強を妨げるのはたしかですが、どの程度の不足で、どれだけの影響が出 るかは把握されていません。しかし、睡眠を十分に取ることが重要なのは確かであり、現代人の多くが睡眠 不足気味であることも確かでしょう。

▪治療・管理
環境の騒音を減らす方法の一つが耳栓です。
以下に2つの研究論文の要約を掲載しますが、どちらも、耳栓に改善効果があることを認めています。
他の論文によると、耳栓がフィットしているか、快適であるかによって、効果はかなり異なります。耳栓を 買う前には、優しく、しっかりとフィットしているかどうかを、しっかり確かめてください。

文献
Reducing the effects of noise in hospital, Haddock J. Nurs Stand 1994 Jul 20-26;8(43):25-8.
Nihon Emergency Medicine Society Kanto Region 18 (2), 1997, And o, Ishizuka, Kikuta et al.

日救急医会関東誌 18(2)、1997年、安藤 奈都美、et al.

救命センターにおける睡眠への援助について耳栓の効果を妨げる音を検討する

救命救急センターの環境は、その特殊性より患者が良好な睡眠を得にくい。現在まで騒音を小さく するため種々の環境面の工夫を行ってきたが、効果が得にくい状況であった。そこで今回私たちは、 一手段として耳栓を使用し、騒音による睡眠障害に対する効果を検討した。

結論1 耳栓はセンター内での睡眠障害を改善し得る有効な一手段と考えられた。
結論2 最も睡眠の妨げとなる音は医療従事者の声や足音であった。


Nurs Stand 1994 Jul 20-26;8(43):25-8, Reducing the effects of no ise in hospital, Haddock J.

病院で騒音の影響を減少する検討について

本論文は、病院における患者の不眠症の主因の一つが音であることを確認し、耳栓の遮音性と、耳 栓によって睡眠障害が改善される効果について延べています。 あるテストスタディでは、耳栓をつ けた患者と、つけない患者の睡眠の良好さが比較されており、耳栓が睡眠を改善する処置として有 効で、容認されるべきであるとされています。

文献
Japan Emergency Medical Society of Kanto 18 (2), 1997, N. Ando, et al.
Nurs Stand 1994 Jul 20-26;8(43):25-8, Reducing the effects of no ise in hospital, Haddock J.
Am J Crit Care 1999 Jul;8(4):210-9, Wallace CJ, Robins J, Alvor d LS, Walker JM,
World Health Organization, Community Noise, Edited by Birgitta Berglund & Thomas Lindvall Stockholm, Sweden,1995.
www.adam.com Updated by: Galit Kleiner-Fisman MD, FRCP(C), Depa rtment of Neurology, University of Toronto, Toronto, Ontario, Canada. Review provided by VeriMed Healthcare Network.
Berglund, B., & Lindvall, T. (Eds.). Community noise. Archives of the Center for Sensory Research, 1995, 2(1),

▪定義
単調な仕事をする時などに、ある程度の騒音は、気をまぎらわせる効果があります。
一方、何かを記憶したい時、注意深くなくてはならない仕事、同時に複数のことをする場合には、騒音がじゃ まになります。ですから、学校・オフィス・工場などでは、音響状態についてよく考える必要があります。

ここでは、WHO(世界保健機構)がまとめた騒音と業績に関する論文から、いくつかの例をご紹介します。 騒音は業績に悪影響を与えます。騒音を聞かせた直後、校正やむずかしいパズルの点数が、著しく低くなる ことが分かりました。(S.Cohen 1980)
工場の騒音の中で、耳を防護する機器を使用した場合は、明らかに生産性が高くなりました。(Broadbent, 1971; A. Cohen, 1974; Smith, 1989).”

▪治療・管理
学生にしても社会人にしても、ベストを尽くすには音響状態を管理する必要があります。
スウェーデンでは、教室の環境音を30 dB(低めの会話くらいの音量)以下にするよう求めました。
一般的に聞かれる会話は50dB くらいですから、20dB をシャットアウトする耳栓を用いると、勉強や仕事 にふさわしい環境をつくることができます。

文献
World Health Organization, Community Noise, Edited by Birgitta Berglund & Thomas Lindvall Stockholm, Sweden, 1995.
www.archoustics.com (c) Copyright 1996-2001 LEAGUE FOR THE HARD OF HEARING - Updated April 6, 2001.
asa.aip.org Acoustical Society of America
www.access-board.gov The Access Board
www.acoustics.org "America's Need for Standard & Guidelines to Ensure Satisfactory Classroom Acoustics" by Dr. Lubman on CLASSROOM ACOUSTICS a resource for creating learning environ ments with desirable listening conditions published by the Acoustical Society of America.

▪定義
多くの医学論文が、身体と精神への騒音の影響をとりあげており、WHO においてもさまざまな研究がされ、 騒音がストレスの原因になることが明らかにされています。さらに、いくつかの研究では、騒音のストレス が精神の病気・高血圧に悪影響を及ぼすとの報告もされています。

▪治療・管理
ストレスの原因はさまざまです。
ストレスがあるのではないかと思ったら、早めに専門の医師にご相談ください。騒音をなくしただけでスト レスが軽減することもあります。耳栓・耳おおいなども試してみる価値はあるでしょう。

文献
Noise: A Health Problem, United States Environmental Protection Agency.
Office of Noise Abatement and Control, Washington, DC, 20460, Aug ust 1978.
World Health Organization, Community Noise, Edited by Birgitta Berglund & Thomas Lindvall Stockholm, Sweden, 1995.
Production Sound Report, Spring 1986, How's Your Hearing, By Di ck Topham.
Production Sound Report, Summer 1986, How's Your Hearing, By Di ck Topham.
Production Sound Report, Fall 1986, How's Your Hearing, By Dick Topham.
(c)2001 WebMD Corporation. All rights reserved. Kathryn Brown A rticle.
van Kempen EE, Kruize H, Boshuizen HC, Ameling CB, Staatsen BA, de Hollander AE.
The Association between Noise Exposure and Blood Pressure and I schemic Heart Disease: A Meta-analysis.
Environ Health Perspect. 2002 Mar;110(3):307-17.

▪定義
耳鳴りは、耳の奥のほうで、ブーン、ピチピチ、カチカチといった不快な音が聞こえる病気です。さまざま な原因で起こりますが、大音響によって内耳を傷めた場合も多いようです。他にも、200 以上の薬品、腫瘍、 アレルギー、循環器関係の病気などが原因として考えられます。

▪治療・管理
耳鳴りを治す決定的な治療はありません。
いろいろな方法を試しながら、自分に合った治療方法をみつけるようにしましょう。あまり神経質にならず、 耳鳴りとつきあっていくぐらいのゆとりを持って、リラックスしてください。
本格的な治療を開始する前に、次のようなことを実行することをお勧めします。

  • ・耳鳴りが悪化しないように、騒音の中では耳栓をつける。
  • ・血圧をチェックし、上手に管理する。
  • ・血液の循環に悪影響がある塩分を控える。
  • ・タバコ、コーヒー、お茶、コーラなど興奮作用のあるものは避ける。
  • ・血液の循環をよくするために毎日運動をする。
  • ・睡眠を十分にとり、あまり疲れないように気をつける。
  • ・耳鳴りに神経質にならず、長くつきあうぐらいの気持ちで忘れるようにする。
  • ・良い音楽を聴く。

マスカー(微音を発生する電子機器)によって、耳鳴りをなくすることはできませんが、異音がやわらかく 感じられるようにはなります。ラジオのノイズを低い音量で聞くのも、耳鳴りを抑える効果があるようです。 薬品で治療する方法もあり、症状によっては効果があります。「Tinnitus retraining therapy」は、カウン セリングとマスカーの組み合わせで治そうというもので、時間はかかりますが、薬を使わず、かなりの効果 が得られます。
耳鳴りは、人によって大きなストレスとなるので、悩んでいる方は早めに耳鼻咽喉科の医師に相談するか、 カウンセリングを受けるようにしてください。

文献
Audiology and Auditory Dysfunction, George T. Mencher, Sanford E. Gerber, Andrew McCombe, Allyn & Bacon, 1997.
National Institute on Deafness and Other Communication Disorder s (NIDCD), www.nidcd.nih.gov
American Tinnitus Association, www.ata.org
American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery, www.e ntnet.org